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RX350h “version L”
「LEXUS RX350h “version L”」から伝わってくるハイブリッドならではの優しさと安心感、そして濃厚なLEXUSらしさの正体

日本国内で第3世代にフルモデルチェンジしたLEXUS RXが先進運転支援システムの強化や機能拡張などの一部改良を受けたのが2023年7月のことで、これと同時に追加されたグレードが「RX350h」だった。レスポンスのよいパワートレーンと駆動力特性を進化させた制御システムを組み合わせることで、高い動力性能と高効率を高次元でバランスさせたモデルだ。こうした特性に加えて、ラグジュアリー性も兼ね備えた「RX350h “version L”」にモータージャーナリストの渡辺敏史氏が試乗。LEXUSらしさやRXの個性はどこにあるのかレポートする。

Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Masayuki Inoue

高効率だけではない、遅れて登場したハイブリッドモデルRX350hの個性

BEVのRZやミニバンのLM、コンパクトなLBXなど、多面的にカテゴリーを開拓するLEXUSのラインアップにおいて、不動のトップセラーとして君臨するのがRXだ。近年はひと回りコンパクトなNXが、仕向地によってはRXを上回るセールスを記録することもあるが、初代の登場から四半世紀以上の時を経て、世界の100カ国近くで累計400万台近くを販売してきたという実績に揺らぎはない。

そのRXは2022年11月にフルモデルチェンジ、当初はガソリンモデルのRX350、PHEVモデルのRX450h+、ハイパワーハイブリッドのRX500hの3バリエーションが発売されていたが、シリーズの中でも売れ筋であろうベーシックなハイブリッドモデルは、部品調達や生産の関係で発表が見送られた。先の半導体不足の影響もあって安定供給のハンドリングが非常に難しい時期だった。そのあおりを受けた形でもある。

現行型のデビューから半年あまり経過した2023年7月に、満を持して登場したのがRX350hだ。2.5L直列4気筒エンジンとモーターの組み合わせで、駆動方式はFFと4WDが用意されている。4WDモデルは後輪軸にもモーターを配するため、前からドライブシャフトが伸びるような構造ではない。FFモデルの燃費はWLTCモードで20.2km/L。4WDモデルでも18.7km/Lと、PHEVのRX450h+とほぼ同じだ。実質的にはもっとも効率の高いグレードとみていいだろう。

伝統と革新が同居するリヤスタイルには、ボディを低重心に見せるためのデザインが幾重にも織り込まれている。

乗員をもてなすラグジュアリーさと最新機能

RXのボディサイズは全長4,890×全幅1,920×全高1,700mm。グローバルでみればSUVカテゴリーのど真ん中な車格ともいえる。日本の道路環境では大きく感じる場面もあるだろうが、NXという受け皿ができたおかげで、きれいに棲み分けられるようになった。

もちろん、車格が大きいため室内にゆとりもある。荷室は後席使用時でも従来型より1割以上大きい612Lへと拡大。そのままでも9.5インチのゴルフバッグが4つ積めるほどのスペースを確保した。さらに40:20:40で独立分割できる後席の背もたれを倒せば、スキー板のような長尺物の積載も可能だ。

その後席はホイールベースの延長もあって、足元まわりはゆったりしている。仮に身長181cmの筆者が4人座ったとしても、窮屈さを感じることはないだろう。さすがにNXではこうはいかないか・・・というところをしっかり押さえている。

ソリスホワイトの内装とメーカーオプションのパノラマルーフ(チルト&アウタースライド式)が温かみある空間を演出する。

内装の作り込みはさすがにトップセラーの貫禄だ。ウルトラスエードがダッシュボードとドアトリムを取り囲むように配され、間接照明とともにテクスチャーが柔らかく浮かび上がる仕掛けは新しいオーナメント表現ともうかがえる。

中央に陣取るインフォテインメントモニターは14インチの大画面で、タッチパネルによるコントロールだけでなく、AI対話型のボイスコントロールによる操作もできる。「エージェント」と名付けられたこのシステムは年々音声認識率が向上しており、カーナビの目的地設定や現在地周辺検索など複雑なコマンド入力をスムーズに応答してくれるようになった。

大型タッチディスプレイに機能の多くを集約することで、物理スイッチの配置は最小限に抑えられている。

相性がよい、モーター駆動領域の広さと“version L”の上質さ

従来モデルのハイブリッドグレードといえば、エンジンパワーに余裕のある3.5L V6+モーターパワートレーンのRX450hが電動化の看板を背負っていたわけだが、新型にはそれぞれ異なる個性と特色を持ったハイブリッドの三枚看板がある。

今回の試乗車であるRX350hはモーターで日常領域での力感をしっかり補いつつ、排気量2.5Lの高効率エンジンで目に見えるほどの燃費低減を図る・・・と、そんなキャラクターが味付けされている。そのほかにも、プラグインハイブリッドシステムを搭載して速さと長時間の給電機能という多用途性を持たせたRX450h+、2.4L直列4気筒ターボハイブリッドを採用してスポーティと評せるほどの強力なパフォーマンスが味わえるRX500hを用意する。

ハイブリッドの三枚看板は価格や用途によって選ぶことになるだろうが、多くのユーザーにとってのベストチョイスはやはりRX350hではないかと思う。

エレガントな仕様ともいえる“version L”だが、ボディ剛性や重心高などクルマの基礎性能を高められたRXの走りは気持ちがよい。

そんなRX350hのパワートレーンは、日本の道路環境に照らせば十分以上のパフォーマンスを発生する。電池残量やアクセルペダルの踏み込み量によるところもあるが、発進から30km/h超まではモーター駆動により途切れなく加速してくれるし、そこから加勢に加わるエンジンの稼働も、メーター内のインジケーターを見ていなければ気づかないほど静かでなめらかだ。

中間速度域での加速はより力強く感じられるが、これは従来よりもエンジンの稼働は控えめにしつつ、大きなトルクを発生するモーター駆動の領域を増やすようにハイブリッドシステムのマネジメントを改められたからだろう。高速道路への合流のように一気にスピードを上げるシーンではさすがにエンジン音が聞こえてくる。それでも、モーターによる大トルクもあわさってぐいぐいと押していき、巡航状態に移行すれば積極的にモーターを使って燃費低減と静粛性向上に務めてくれる。

試乗車はリヤに40kW(54PS)/121N・mを発生するモーターを搭載し、モアパワーと走行安定性を実現する4WDモデル。

試乗したグレードは“version L”。この名称はLEXUSの中でもっとも豪華な装備やトリムを指すが、RXにおいてはこれが標準的な位置づけとなる。エレガンスさを前面に押し出したその乗り味は、始終優しいタッチでまとめられていた。街中走行で凹凸はふわりといなしつつ、高速道路では舗装の荒れや橋脚のジョイントなどからくる入力を必要以上に感じさせず、静かになめらかに転がってくれる。

骨格から刷新された効果もあって、山道のようなところでも大柄な車体を持て余すこともなく正確なライントレースでストレスなくコーナーを駆けてくれるが、基本的には丸く柔らかい乗り心地をゆったりと楽しむのに向いている。このあたりはRX350の“F SPORT”や、RX500hの“F SPORT Performance”の銘柄との棲み分け、そしてNXとのキャラクターの差別化という意向も働いてのものだろう。

現在のプレミアムSUVの先駆けともいえるRXは、四半世紀以上におよぶ歴史の中で、移りゆくトレンドや嗜好に合わせて、パワートレーンやグレードの追加などさまざまな手立てで応えてきた。一方で、初代が切り拓いたRXの立ち位置やLEXUSらしさをもっとも色濃く現在まで受け継いでいるのは、今回乗ったRX350h “version L”なのではないかと思う。乗っていてクルマから伝わってくる優しさは、ライバルに比べるものがなかなかない。「これぞLEXUS」と称したくもなる。

渡辺敏史
Toshifumi Watanabe

二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず、独自の視点で多くのメディアで活躍。緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。

LEXUS RX350h “version L” AWD 主要諸元

・全長×全幅×全高:4,890×1,920×1,700mm
・ホイールベース:2,850mm
・車両重量:2,010kg(※)
・パワートレーン:A25A-FXS・直列4気筒+前後2モーター
・エンジン総排気量:2,487cc
・エンジン最高出力:140kW(190PS)/6,000r.p.m.
・エンジン最大トルク:243N・m/4,300-4,500r.p.m.
・モーター最高出力:前134kW(182PS)、後40kW(54PS)
・モーター最大トルク:前270N・m、後121N・m
・トランスミッション:電気式無段変速機
・駆動方式:電気式4WD
・燃料・タンク容量:プレミアム・65L
・WLTCモード燃費:18.7km/L
・タイヤサイズ:235/50R21
・車両価格(税込み):796万円
※ムーンルーフ装着車は+10kg、パノラマルーフ装着車は+30kg、“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム装着車は+10kgとなる。

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