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LEXUS LBX
プレミアムとカジュアル。二つの顔をあわせ持つ新しい高級車「LBX」

LBXはボディサイズなど車格的なヒエラルキーを打破するクロスオーバーSUVである。「本物を知る人が、素の自分に戻り気負いなく乗れるクルマ」として高級車の概念を変えようとしているLEXUSにとって、新たな挑戦となったこのLBXを、自動車ジャーナリストの渡辺敏史氏が試乗した。

Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Hidekazu Nagamoto
撮影協力:伊勢志摩フィルムコミッション、伊勢志摩スカイライン(三重県伊勢市)、VISON(三重県多気町)

高級車の概念を変える、最小のLEXUS

LEXUS史上、最小のクルマとなるLBX。その開発の契機には、LEXUSのマスタードライバーを務める豊田章男会長のこんな想いがあったという。「本物を知る人が週末のリラックスタイムに、上質なTシャツやジーンズとともに履くスニーカーのようなカジュアルなクルマが作りたい」

旧来の価値観であれば相反する要素とされるであろう“プレミアム”と“カジュアル”を両立するモデル。その模索の結果、でき上がったLBXの全長は4,190mm。これまでもっともコンパクトだったUXに対して300mm以上短い。一方で全幅は1,825mmと、UXより僅か15mmタイトなくらいだ。

そのプロポーションはなかなか個性的で、特に後方から見る踏ん張りっぷりはコンパクトカー離れしている。どことなく既視感があるなあと思いきや、デザイナーが意識したのは日本の縁起物、鏡餅のドシッと据わった安定感だったという。とあらば屋根上に橙でも載せてみたくなるその全高は1,545mmだから、大半の機械式駐車場には問題なく入庫できるだろう。

車名のアルファベットはレクサス・ブレークスルー・クロスオーバーが由来で「既存の車格的なヒエラルキーを打破するクロスオーバー」という意味を持つ。
ブランドのアイデンティティでもあるスピンドルグリルは刷新され、ユニファイドスピンドルへと進化した。

車格のヒエラルキーを意識させないクルマであるために、大事な要素となるのは内装の作り込みだ。水平基調のダッシュボードの真ん中にセンターコンソールをしっかり立てたオーソドックスなT字型を基本造形としながら、ドアインナートリムとのつながり感をソフトパッドとステッチで表現、センターコンソールにもソフトパッドを覆うなど、肌に触れる部位の質感をきちんと高めている。

シートは表皮同士を深いところで縫い合わせることにより、からだの沈み込みを優しく受け止めフィット感を高める深吊り構造を採用。凝ったパターンの化粧ステッチをあしらうなどの演出も加えられた。素材はセミアニリン本革やウルトラスエードなどの組み合わせのみならず、シートの配色やシートベルト、ステッチ色など事細かな部位を自分仕様にカスタマイズできるグレード「Bespoke Build(ビスポークビルド)」には、LSやLCなどの最上級モデルのみに配される特別ななめしのL-ANILINE本革が採用されている。

LEXUSのクルマ作りに根付く人間中心の思想をさらに進化させた新しいコックピット。水平基調のシンプルなデザインで操作性もよい。本革シートはセミアニリン本革を採用し、手の込んだ刺繍が施されている。

気の利いたスニーカーのような乗り味

プラットフォームはコンパクトカー向けに開発されたGA-Bをベースとするが、LBX用に手が加えられた部位は枚挙にいとまがない。リヤ開口部の環状構造やダッシュカウル構造の見直しとインパネ内部構造の補強に加え、スポット溶接の短ピッチ化や部位ごとに特性の異なる構造用接着剤による貼り合わせ補強によって、剛性や減衰特性はもはや別物といえるほどに鍛え上げられている。さらにサスペンションまわりもフロント部は専用ジオメトリ設計とし、ストラットタワーの支持部を3点留めに変更して、バネ下には軽量・高剛性なアルミ鍛造ナックルを採用するなど、こだわりの改良が加えられている。

L字型のデイタイムランニングライトが点灯すれば、レゾリュートルック(=毅然とした表情)が強調される。

エンジンは1.5L直列3気筒をベースとするハイブリッドのみの設定。3気筒といえば燃焼効率やトルクといった性能面での利がある反面、特有のサウンドや振動がつきまといがちだが、LBXはバランサーを追加するなどエンジン内部から質感向上に努めており、始動時に安っぽい音を響かせることはない。また、モーター走行中からのエンジン稼働時も始動の振動やエンジンの唸りは抑えられていて、上質さはきちんと達成されている。

LBXの素性がもっとも端的に現れるのは、機敏にして操縦実感もしっかり伝わるハンドリングだ。LEXUSの開発における新たなホームグラウンドである下山テストコースの過酷な環境が、この小さなクルマにも特別な走りを与えたのだろう。しなやかな履き心地で装いを選ばない使い勝手のよさも備えながら、いざとなれば激しい運動にもしっかり対応する気の利いたスニーカー、確かにLBXは、例えるならそういうものに仕上がっていた。

LBXの美しい写真を公開中

Lexus Card Pressでは紹介しきれなかった「LBX“ Relax”AWD」のアザーカットをロケ地の紹介とともにご覧いただけます。

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