moment 2019年 1/2月号
レクサスを語る

LEXUS UX
コンパクトクロスオーバーの新定義

文・渡辺敏史 写真・川口賢典

「Creative Urban Explorer」をコンセプトに、新たなライフスタイルのきっかけ(CUE)となることを目指した新型車「UX」。
前評判も上々の注目車に渡辺氏が見た魅力とは——。

街中も高速道路も自然体で楽しめる

いま、ちょうどいい“SUV”という車のカタチ

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LX・RX・NXと並ぶレクサスSUV・クロスオーバーラインナップに、もっともコンパクトなモデルとして新たに加わるUX。これはすなわち、ブランドのエントリーモデルとしての位置づけなのかと思いきや、話はちょっと違うようだ。

いま、SUVの市況は日本以上に世界各国での盛り上がりが著しい。

たとえば世界最大の自動車マーケットである中国では、もっともポピュラーな中小型車のカテゴリーにおいて販売の約4割をSUVが占めている。しかしこれは、突出した数字ではない。欧米においても、SUVの人気は同様に数値化出来るほど高まっている。

とあらば、もはや多くの人がSUVに期待するものはヘビーデューティユースの局所的な性能ではないのかもしれない。むしろ街乗りで、アイポイントが高くて遠くまで見通せること、乗降のしやすさなどから、SUVの目線、車高が求められているということではないだろうか。

その立ち位置から見れば、SUVというカテゴライズはもはや形骸化していて、新世代の標準的な乗用車のカタチとして人びとはそれを自然に受け入れているのかもしれない。

UXのコンセプトワークはまさに、このように深掘りした発想に基づいている。

普通の車よりは背が高く、標準的なSUVよりは低く、ちょうどその真ん中あたり。それはSUV特有の威圧感を抑えたプロポーションによく現れている。

ちなみにUXの全高は1540ミリと低めな一方で、全長4495ミリ、全幅1840ミリはやや大きめに感じるかもしれないが、これはUXが属するクラスの世界標準サイズに歩を揃えたものだ。

UXを手掛けたチーフエンジニアの加古 慈(かこ ちか)氏によると、普通の車とはちょっと異なるクロスオーバーだからこその護られ感を求めて、デザイナーと何度も折衝しながら、UXにそれを盛り込んだという。

個人的には台形のホイールアーチが大径タイヤを取り囲むサイドビューや、どっしりと台形に構えた据わりの良いリヤビューあたりに、タフなイメージを加えてきたのかなと見ている。

タフで俊敏な走行性能と低燃費の実現

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UXが採用するパワートレーンは2Lガソリン4気筒と2Lガソリン4気筒ハイブリッドの2本立て。まったく新しい直噴高速燃焼技術の採用により、全域でのトルク特性向上や高回転域でのパワーアップなど高性能を追い求めながら、同時に低燃費化も果たしている。その熱効率はガソリン仕様で約40パーセント、より燃費型にセッティングを振ったハイブリッド仕様で41パーセントと、従来のエンジンに対しておよそ2割以上の改善を実現した。

これに併せてガソリン仕様に組み合わせられるミッション、Direct Shift-CVTは、発進用にメカニカルギアを使い、ハイギアードのCVTと合わせることで7.5という超ワイドな変速比を実現した新開発のCVTだ。変速のスピードや伝達効率も向上しており、ミッション単体で従来比約6パーセントの燃費向上効果が見込まれる。

また、ハイブリッド仕様に搭載の2Lハイブリッドシステムも走りの質感向上に力が注がれており、モーターアシストの領域を拡大することで、エンジン側の回転上昇をつねに抑え気味にしつつ、シームレスで力強い加速を実現したという。ちなみに駆動方式はガソリン仕様がFFのみ、ハイブリッド仕様はFFのほか、後輪側にモーターを加えて電動化した4WDも用意される予定だ。

安全かつ快適性能。ドライバーを選ばない“人当たりの良さ”

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レクサスがGA-Cと呼ぶUXのアーキテクチャーでは、ドア周りなどにレーザースクリューウェルディング溶接を多用、加えてリヤゲート部は骨格を環状構造化するなど、開口部の剛性を徹底的に高めている。加えて構造接着材の使用部位を広くとるなど、強いボディ作りのために加えられた手数は、これまでの同級車の比ではない。

その一方で、フロントフェンダーやボンネットフード、前後ドアパネル、リヤゲート骨格にはアルミを使用し、リヤフードには樹脂を用いるなど材料置換による軽量化にも積極的に取り組んでいる。

装備面で特筆すべきは「Lexus Safety System+」と呼ばれる先進安全運転支援装備の充実だろう。プリクラッシュセーフティは夜間の歩行者や昼間の自転車にも検知範囲を拡大し、警報やブレーキ介入によって衝突の予防に努めるほか、駐車時の前後方衝突を防ぐパーキングサポートブレーキ、全車速追従クルーズコントロールやレーントレーシングアシストなど、安全かつ快適な移動のために効果を発揮するデバイスは上位車種にも劣らぬほどに盛り込まれている。

UXのラインナップは搭載パワートレーンによって「UX200」と「UX250h」に大別され、各々に先進装備を充実させたversion Cと、内外装の設えを極めたversion Lというグレードが用意される。加えて、専用の内外装やサスペンションでスポーティネスを高めたF SPORTも選択が可能だ。

小柄な人が理想的なドライブポジションをとった上で、そのリーチの中にスイッチ類やカップホルダーが無理なく収まるように配慮したというUXの運転環境は、なるほど座っただけでも人当たりの良さが伝わってくる。

これはダッシュボードの高さを出来るだけ抑えて開放感のある前方視界を得ながら、フロントフェンダーの両峰を立てて視覚的に車幅感を伝えるようにしたデザイナーの功績も大きいだろう。この視界を実現するためにオーディオのスイッチ類はアームレスト側に配されているが、エルゴノミクス(人間工学)の専門家が吟味を重ねただけあって操作性に無理はない。

“扱いやすく乗りやすい”。生活に寄り添うパートナーたる一台

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UXのドライブフィールはガソリン仕様、ハイブリッド仕様ともにわかりやすい刺激で彩られたものではない。ワインディングロードに持ち込めば同級の一般的なハッチバックと比べてもまったく遜色のない軽快な振る舞いを見せてくれる。いや、ハイスピード領域での操縦安定性はむしろそれらを上回るほどだろう。オンロードでの運動性能の高さ、それがもたらす安心感は間違いなくUXのひとつのセリングポイントだ。

が、より大事なのはそういう限界域での安心感と同等のものが、発進時から街中での取り回し、あるいはバイパスのような中速域での巡航など、普段乗りの領域でも同様に味わえることだ。

とくに、意識することなく自然な運転で加減速が綺麗に行えるという点においては、これまでそういう微妙な操作への応答が不得手だったハイブリッド仕様の洗練度が際立っている。一方でガソリン仕様車も、低回転域からしっかり湧いてくるトルクをじんわりと路面に伝えることが苦手だとされてきたCVTが全然足かせにはなっていない。限りなく普通のトルクコンバーター式ATに近い感覚で、リニアに加減速をコントロール出来る。

ちなみに同じコースを同じように走ってみての燃費差は、おおむね2割程度。街中走行が多ければハイブリッド仕様の優位は揺るがないが、高速道路での移動が多い諸氏は、ガソリン仕様を検討してみるのもありだろう。

じつは、気構えることなく自然体で思い通りに走らせることが出来るという性能も、加古氏がこだわったポイントだ。「扱いやすく乗りやすい」が、女性ゆえの思い入れと言うと語弊があるかもしれない。だが、バリバリの新型車なのに漂う肌なじみの良さや、こなれ感的な心地よさは、女性だからこその優しさの表れなのではないかと思えてくるのだ。

加古 慈

加古 慈

1967年愛知県生まれ。89年、奈良女子大学家政学部卒業後、同年にトヨタ自動車入社。2001年より3年間トヨタモーターヨーロッパに出向。12年からCTの開発を担当。15年、Lexus International ZL チーフエンジニアを務める。18年、トヨタ自動車の常務役員およびLexus InternationalのExecutive Vice President就任。

渡辺敏史

わたなべ としふみ

1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。

moment 2019年 1/2月号より