moment 2018年 1/2月号
レクサスを語る

LEXUS CT 200h
誇り高き
プレミアム・コンパクト

文・渡辺敏史 写真・川口賢典

一目でレクサスと分かるシャープなフェイス、アグレッシブで爽快な走り、ラグジュアリアスな乗り心地……。羨望のプレミアム・コンパクトで、街へ。

“小さな高級車”が演出する贅沢な静寂と上質の走り

“小さな高級車”の苦悶とCT200hの絶え間なき進化

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レクサスのラインナップにおいて、CT200hを端的に言い表せば、一番小さくて一番燃費のいいモデルということになる。選ばれる理由も環境的配慮や街中での扱いやすさといった合理的なところが筆頭に挙げられるだろう。逆に言えば、そのミニマルな志向に対して、どういった個性を付与して提案するかがCT200hの腕のみせどころということだ。

“小さな高級車”と言うは易しだが、日本のメーカーにとってそのカテゴリーには苦悶の歴史がある。

過去には、ユーザーの声を汲んでさまざまなメーカーが多くのモデルでそれにトライしてきたものの、いずれも記憶に残るようなヒットには至らなかった。兄貴分にあたるモデルの縮小版であったり、結局はコスト管理に圧された設えに収まったりと、そのアラをユーザーは感覚的に見極めてしまう。贔屓目なしにそれをある程度理想的な形に収められたのは、今から20年前に登場したトヨタの「プログレ」くらいではないだろうか。未だ愛用するオーナーが多くいる。人気の理由は、車格のみならず欧州的価値におもねらない、唯一無二の世界観をしっかり示していたからだ。

CT200hはデザインとメカニズムの両面で、同級の車格に括られる数多のライバルとは一線を画することを狙いとして登場し、その後のマイナーチェンジでも進化を重ねてきた。その過程で足回りやボディ剛性など中身の隅々に手が入れられたが、ハイブリッド専用車という強力なアイデンティティーに揺らぎはない。

エンジンとモーターの滑らかな連携と静粛性

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今でこそ、同様のメカニズムを搭載するライバル車も散見されるようになった。が、CT200hのアドバンテージは、ふたつのモーターを常に最適制御することにより、エンジンとの協調による力強い加速感やモーターのみでのEV走行、そして減速時の高度なエネルギー回生などをシームレスに繋いでいることだ。特に発進・停止の多い市街地走行では、断トツの高効率=低燃費を誇る。

CT200hは独自のハイブリッドならではの長所に加え、自らの特徴としてエンジンとモーターの連携感を滑らかに整え、静粛性も高めている。レクサスらしい上質感の追求の一環というわけだが、そのおかげで実用的な速度域での静かさはクラスを超えたところにあるといえるだろう。街中にいて喧騒を避けることは難しいが、CT200hなら移動とともに、自分だけの静寂な空間を手に入れられる。

その時間をより豊かなものにしてくれるのは、厳選されたマテリアルを用いた内装だ。たとえば「バージョンL」に採用されるレザーはシックな2トーンの色味だけでなく、しっとりとした手触りのなめしなど、その質感も上位車種に劣らない。そして助手席側のダッシュボードに配されるオーナメントパネルには縞杢や竹などの天然素材が用いられるなど、控えめにオーガニックな演出も施されている。装備面ではインフォテインメントのモニターを10.3インチに拡大するなど、見やすさや扱いやすさへの配慮も怠らない。

LEXUS CT 200h

今回のマイナーチェンジでは、レクサス独自のデザイン要素をさらに洗練させ、新意匠のグリルメッシュの採用をはじめ、より上質でアグレッシブなデザインに進化した。

その場の空気になじみ、染み入るような走行を実現

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今回のCT200hのマイナーチェンジにおいて、機能面でのハイライトは先進運転支援システム「レクサスセーフティシステム+」の採用だろう。歩行者を検知し、衝突回避を支援する「プリクラッシュセーフティ」や、車線逸脱の回避をブザーやステアリング操作のアシストなどで支援する「レーンディパーチャーアラート」、前方状況に応じてヘッドライトの切り替えを自動で行うオートマチックハイビーム、そして前走車との車間や速度を自動で調節するレーダークルーズコントロールと、これらの機能を全グレードに標準装備とすることで、CT200hは最新の安全性能を手に入れたことになる。

フロントとリア回りに大きく手が施されたことで立体感を高めたエクステリアは、灯火類のグラフィックも上位モデルとの連続性を意識したものとなり、ブランドの一体感がより強く感じられるものとなった。端的にオシが強くなったと言えなくもないが、走り出してみればそこにはCT200hらしい世界観が活きている。その場の空気にスッとなじんで染み入るような走行感覚は、持ち前の小ささや静かさに加えて、アクセルやブレーキの操作に対する柔らかな応答感からも醸されているのだろう。

必要に応じてアクセルを踏み込めばその分だけパワーが伝わり、エンジンがむやみに唸りを上げることもない……といったリニアなコントロール性は、マイナーチェンジを重ねてたどり着いた熟成の賜物である。

もしアクティブなドライビングを望むなら、手許のダイヤルでドライブモードをスポーツの側に設定すれば、CT200hは途端にアクセルレスポンス重視の快活なキャラクターへと一変する。さらには、専用チューンのサスペンションを擁するFスポーツもラインナップに加わるが、標準側のグレードでもその運動性能に過不足はない。

静的・動的質感の高さを声高に主張せず、その小さな体躯に静かに収めたCT200hは、レクサスらしいわきまえを感じさせる1台だ。それをもって、日本らしさを代弁する“小さな高級車”と評しても間違いではないだろう。

LS+ Concept

From Tokyo Motor Show 2017

「LS+ Concept」が示す未来

レクサスが目指す自動運転の具体像を世界初公開

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東京モーターショー2017の会場で、何の前触れもなくサプライズのお披露目となった「LS+ Concept」。その姿を目にした多くの人は、上市したての新型LSとの濃い連続性を感じたのではないだろうか。

通常、モーターショーで展示されるコンセプトカーは少なくとも5年、10年といった、我々がまだ見ぬ近未来の絵面を感じさせることを目的にしたものが多い。が、このLS+から見える未来は生々しく窺える。聞けばそのキャビン部は新型LSそのものだというから、もうこの「近さ」は確信犯的演出ともいえるだろう。

と、その疑問を新型LSのチーフエンジニアでもある開発責任者の旭利夫氏に尋ねてみた。

「新しいLSが出たからとそこに甘んじることなく、レクサスは先見的なブランドを目指して、常に先を見据えた新たな提案を継続する。我々の“攻め続ける”という姿勢を示したかったんです。もちろん、新型LSにも数年後にはマイナーチェンジが入るでしょう。その時にこの通りの意匠になるという話ではありません。しかし、我々がこの先の何を見据えているかということは、出し惜しみせず表現し続けていこうという意志の表れだと思っていただけると有り難いです」

「LS+ Concept」のデザインを担当した袴田浩昭グループ長が続ける。

「LSとの連続性は感じられるかもしれませんが、デザイン側としては具体的なモデルや投入時期を強く意識しているわけではありません。このモデルでは現在より一歩進んだ先進安全技術の搭載を前提に、たとえば冷却性能を含めた空力性能の向上、新技術による視認性向上、そういった具体的な性能を伴うところの意匠的進化を表現しています。グリルの立体的な表現や配光性に優れた光源を用いた灯火類などは、新たなディテールとしてLSに限らず次世代のレクサスデザインの方向性のスタディとして提案したものです」

そして、近未来の自動運転技術へのビジョンを具体像として示す目的もある。

「レクサスでは2020年を目標に、自動車専用道での入口ランプから出口ランプの間において、分岐合流を含めた自動運転実用化を目指しています。そのための要素技術をこのコンセプトカーに盛り込みました。ただし、カンパニーとして考える自動運転は人と車がチームメイトのような関係を築くことです。すべての人に自由な移動を提供するために、車両だけですべての運転操作を行う技術はもちろん用意する、その上で、たとえば車線変更等の判断において人と車がどういう意思疎通を図るのがベストなのか。それはハードウェア以上に大きな課題ですが、人に寄り添う、そんな自動運転を目指していきたいと思います」

自動運転技術の表現は些細なミスリードがシステムの過信を招き、それは乗員の危険を招く要因にもなりかねない。先進安全技術開発を担当する鈴木浩二室長は、言葉を丁寧に選びながら、レクサスが目指す自動運転の未来像を語ってくれた。「LS+ Concept」が示す未来、それは想像以上に早いタイミングで、レクサスの市販車を通して体験することになるのだろう。

LS+ Concept

第45回東京モーターショー2017で世界初公開された「LS+ Concept」。フラッグシップセダンLSの将来像を示唆し、2020年の実用化を見据えた自動運転技術「Highway Teammate」を採用。自動車専用道路において入口ランプウェイから出口ランプウェイまで自動走行することが可能になる。実際の交通状況に応じて車載システムが適切に認知・判断・操作することによって、合流や車線変更などを実現するという仕組みだ。エクステリアはより大胆に進化したスピンドルグリルのほか、レーザーを用いた灯火類や電子アウターミラーなどにより、レクサスならではの先見性を表現している。

わたなべ としふみ◎1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。

moment 2018年 1/2月号より