moment 2019年 5/6月号
レクサスを語る

LEXUS ES
極上の寛ぎが備わる
ラグジュアリーセダン

文・渡辺敏史 写真・川口賢典

昨年10月末、満を持して日本の市場に投入された新型「ES」。昨今のSUVブームの中にあって、好調な売れ行きを示しているという。 FFを採用しながらも洗練された走りと快適な居住性を叶え、 量産車としては世界初のデジタルアウターミラーも採用。 そこには、「日本のお客さまにもESを届けたい」という 開発者、榊原氏の思いが込められていた——。

仕立てのよいシャツを着るような心地よさ

「日本のお客さまにもESを届けたい」という開発陣の熱き思い

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今年、レクサスは北米市場でブランドを立ち上げてから30年という節目を迎える。そのコンセプトや乗り味、あるいは販売店での接客応対に至るまで、守旧的なプレミアムブランドとは一線を画するイノベーターとして企画され、成功を収めるに至った礎を築いたモデルがLSとこのESである。

トップレンジのLSに対して、ESは幅広いユーザーにレクサスのブランド価値を供することを目的としたセダンであり、現在もRXやNXといった売れ筋のSUVと同等の販売台数を誇っている。

販売地域はレクサスがブランド展開するほぼすべてのエリア、約90カ国に及ぶ。が、日本ではかつてトヨタブランドで「ウィンダム」として販売されていた経緯はあるものの、ESとして販売されるのはこれが初となる。

「ESは北米や中国、ロシアなど世界のマーケットで人気をいただいている、レクサスで最も売れているセダンです。
『日本のお客さまにもESを届けたい』という思いは、開発側も常に抱いていました。

ただ、乗り心地や静かさといった快適性の面では満足いただけても、動的パフォーマンスが物足りないと感じられるのではないか、販売側からはそう危惧されていた側面もあります」

そう語るのは、ESの開発を担当した榊原康裕チーフエンジニアだ。
「新しいESはまったく新しいGA−Kプラットフォームと、大刷新されたハイブリッドシステムを得て、運動性能や動力性能が飛躍的に高まりました。これをもって、走りへの要求が強い日本や欧州の市場においても、販売展開が実現したわけです」

つまり新しいESは本来の持ち味である快適性と「走る・曲がる・停まる」の動的資質を高次元で両立させ、新たな価値観を訴求できるモデルへと発展したというわけである。

FFの常識を覆す洗練された走りと快適な居住空間

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車格的にはLSとGSの間に位置するESは、両車との決定的な違いとしてFF、つまり前輪駆動を採用している。一般に前輪駆動は加減速の車体姿勢が不自然だったり、操舵の感触が安っぽかったりといわれるが、今やそのあたりは高級車と呼ばれるカテゴリーでも十分通用するほど洗練されている。

その上で、ESの一番の機能的長所であろうポイントは、メカニズムがコンパクトなFFであるがゆえにもたらされたものだ。

それは広大な居室と荷室の空間である。とりわけ後席空間については膝周りのスペースや横方向の広さなど、上位のLSと並べてもまったく遜色がない。後席下面にハイブリッド用のバッテリーをコンパクトに収めたおかげで、トランク容量は9.5インチのゴルフバッグを4つ積めるゆとりがある。

ESのグレード構成は非常にシンプルで、内装トリムや装備を充実させたversion L、スポーティな内外装や電子制御可変ダンパーを与えられたF SPORT、そして標準車の3つとなる。エンジンはいずれも2.5L4気筒ユニットに電動モーターを組み合わせたハイブリッドだ。エンジンの側には最新の燃焼テクノロジーを採用しており、パワーと効率の両立が徹底的に突き詰められている。

ESの走りはタウンスピードからとてもナチュラルだ。操作に対する応答に段付き感や唐突感のようなものはまったく感じられない。モーター走行からエンジンが稼動するその繋がりは音に注意していても気づかないことがあるほどだし、中高速域でも緩加速であればアクセルの微妙な操作でエンジンの回転を無用に高めることなくリニアに応じてくれる。減速時のブレーキの回生協調制御もいたって自然……と、FFだハイブリッドだと、ひと昔前なら高級車にとってハンデに思われていたファクターを見事に克服していた。電動化を先駆けるメーカーならではの巧い仕上がりだ。

件の運動性能についても前世代とはひと味もふた味も違う敏捷性と安定性を備えている。山道はESにとってむしろ得意項目とさえいえるかもしれない。そういった場面ではさすがにF SPORTの限界点の高さが際立つが、乗り心地とのバランスポイントの高さでいえば、17インチタイヤを履く標準車も積極的におすすめしたくなる。もちろん、静的質感の高さをもってversion Lを選ぶもよし。3つのグレードに各々長所がしっかりみてとれるあたりも、ESの基本的な完成度の高さが裏付けられているといえるだろう。

新世代レクサスを象徴するESの美意識

量産車では世界初。デジタルアウターミラーのオプション装着が人気

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ところで今回は、興味深いオプション装備がある。量産車では世界初採用となる「デジタルアウターミラー」。従来のサイドミラーの位置に小型のカメラを装着、室内に据えられた5インチディスプレイに映し出される映像によって後方状況を確認する。映像が室内の側にあるので従来のミラーよりも視点移動が少なく、カメラ部は小型ゆえ死角の低減にも寄与している。また、ウインカーに連動して画角が広がり周辺状況を掴みやすくするなど、カメラ式ならではの機能も豊富だ。

現状はversion Lのみに設定されているオプションで、価格は税別20万円と高価な上、レクサスでは希望するユーザーに対して装着車で機能確認した上での購入を促しているそうだが、装着率は想定を上回るところで推移しているという。

榊原 康裕
 

榊原 康裕

静岡県出身。1988年トヨタ自動車入社。7代目「カムリ」の開発主査などを経て、2017年からESのチーフエンジニア。19年からはUX、CTのチーフエンジニアを担当する。

渡辺敏史

わたなべ としふみ

1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。

moment 2019年 5/6月号より