moment 2019年 3/4月号
レクサスを語る

LEXUS RC
“美しく走る” スポーツクーペ

文・渡辺敏史 写真・川口賢典

レクサスのフラッグシップクーペ「LC」の流れを汲んだ流麗なデザイン、空力性能やサスペンションにフォーカスして徹底的に見直した走り。より熟成された“「RC」らしさ”に迫る。

すべては「絶世のRC」のために

マイナーチェンジは“パーフェクト”を狙える絶好のチャンス

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車のトレンドがSUVや高級ミニバンに傾くほどに、その存在意義が薄らいでいくように見えるのがクーペだ。でもそれは機能面からの視点であって、車に優美さを求める向きにとっては、むしろその希少性を歓迎するかもしれない。

また車メーカーにしても、採算ばかりを気にしていては、車を作りつづけることが難しい時代とも言えるのではないか。レクサスには、そんな車が2車種ある。

ひとつはフラッグシップモデルたるLC、もうひとつはオーセンティックなクーペフォルムをもつRCだ。そのRCが昨秋、初めての大規模なマイナーチェンジを果たした。

開発を取りまとめる小林直樹氏は、その趣旨を「落ち着きのある」「上質な」といった言葉を多用しながら語る。

「マイナーチェンジは車本体の伸びしろを極めるうえに、時代的な変化も織り込める。“パーフェクト”を狙える絶好のチャンスなんです」

すっきりと奥深い走り。ワインディングもさらりとこなすRCの魅力

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マイナーチェンジが施されたRCのスタイリングは、前型に対して要素が整理されてすっきりした印象を受ける。たとえばヘッドライトは三眼LEDの光源を大胆に小型化し、アイキャッチでもあるL字型のクリアランスランプをユニットに一体化。グリルのデザインも変更され、シンプルな表情になった。

また、バンパー横のエアアウトレットやウインドウモールの形状を機能形状とし、空力性能を改善しながら落ち着いたルックスに仕上がっている。“F SPORT”に採用のブラックアウトされたウインドウモールは塗装ではなく、ステンレスの被膜厚を巧みに加工することで、金属感の強い黒に見えるという自動車用としては他に類のないフィニッシュを採用。これは小林氏が、その技術をもつ金属加工会社の社長のもとに何度も足を運んで口説き、納入が実現したのだという。 「しかし、一番の変化はなんといっても走りに感じていただけると思います。すっきりと奥深い——と称しているレクサスの走りの方向性は、LCの登場によって明確に具現化されました。

そうなると、RCもそことの連続性が感じられる走りの質感を備えなければなりません。幸いRCは最初からFモデルの販売を予定していましたから、剛性は充分に確保してある。まさにその伸びしろを充分に活かしてサスペンションやブッシュ、タイヤや空力に至るまで再チューニングしました」

500PSに迫らんとする5LV8ユニット。RC Fの高剛性ボディは、そのパワーをサーキットで存分に解き放つために存在する。

そしてRC Fと骨格をほぼ同じくするRCがそのポテンシャルを活かして目指したのは、目を吊り上げて没頭するようなスポーツドライビングへの対応ではない。いざとなればきっちり走り込める性能を維持しながら、あえて一歩退いて、気負いなくワインディングをスラスラ走れる気持ち良さを重視したという。

人生の相棒としての2ドアクーペ

ストレスのない加減速とステアリングフィールの絶妙な連動

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今回試乗したのは、キャラクター的にもエンジンパワー的にも、もっともスポーティなセッティングが施されているであろうRC350の“F SPORT”だったが、そのセッティングが思惑通りに働いていることはすぐにわかった。

まず街中で多用する低〜中速域の乗り味は細かな上下動や揺すりが少なく、歴然とフラットな印象だ。これはごくわずかな衝撃にもダンパーをしっかりと働かせて車体の無駄な動きを抑えているから得られるもので、上質感や安心感にも繋がっている。

さすがに速度を上げていくと、路面の大きな凹凸は車体も正直にそれを受け止めるが、大径タイヤが苦手とする高速道路の繋ぎ目段差などは、突き上げや入力音もしっかり抑えられていた。

「たとえば、雑音に満ちた部屋で高音質のクラシック音楽を聴いても、その良さが分からず、感動は得られませんよね。

車内はさらにシビアです。ノイズを極限まで抑えることで初めて、車のもつ本当の良さが味わえる。静粛性は“上質な乗り心地”の根幹となるものです」

また、ワインディングでの振る舞いも大きくテイストを違えている。穏やかに効きが立ち上がり、踏み込むほどにキチッと停まるブレーキのコントロール性、コーナーの曲率に対して舵角がすっと自然に決まり修正も最小限に留められる操舵フィール……と、そのキャラクターはナチュラルで滑らかになった。

反面、キビキビ動いてスパスパ曲がる的なレスポンスはやや薄らいだようにも見えるが、それは車の側の所作が柔らかくなったからだろう。 「減速してステアリング切って曲がって再び加速して……と、運転の一連の動作が綺麗に繋がる感覚って言葉にすると地味かもしれませんが、走り好きの方や運転歴の長い方には、車の“いいもの感”として受け止めてもらえるんじゃないでしょうか。

そしてクーペとは、このような成熟した考えの方々に支持していただけるパッケージです。新しいRCも、まさにそういうお客さまに乗っていただきたいという想いで開発しています」

小林氏の言う通り、たしかにクーペは人生を楽しもうという心の余裕が選ばせるものなのだと思う。そして佇まいも走りも一段と大人になった新しいRCは、そういう志向のユーザーと豊かな時間を共に出来るものとして、熟したアピアランスとパフォーマンスを備えるに至ったことは間違いない。

小林 直樹

©Shigeyoshi Ohi

 

小林 直樹

1986年トヨタ自動車入社。車両実験部でさまざまな車種の強度・信頼性評価に携わった後、94年〜2001年まで「カローラ」系の次世代フロントサスペンション設計や、操縦安定性・乗り心地開発に従事。02年には初代「オーリス」の開発まとめを行った。現在、ISおよびRCの製品企画 主査。車の開発は「子育てと同じ」。

わたなべ としふみ

©Shigeyoshi Ohi

わたなべ としふみ

1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。

moment 2019年 3/4月号より