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moment 2018年 3/4月号
レクサスを語る

LEXUS LS
完全刷新を果たした
フラッグシップサルーン

文・渡辺敏史 写真・川口賢典

先進テクノロジーとエモーショナルな走り、そしてTAKUMIを極めたデザイン。
レクサスが追究してきた“独創的ラグジュアリー”の極みがここに——。

ラグジュアリーの価値軸 シフトに呼応して

「初代の衝撃を超えろ」妥協を拒否した完全刷新

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開発当初から、レクサスブランドの大黒柱たることを目的として1989年に登場したLSは、以降4代、四半世紀以上にわたり、レクサスの象徴としてその座を揺るぎないものとしている。それすなわち、ドイツの3ブランドを中心に熾烈な争いが繰り広げられる世界のフルサイズサルーン市場においても、プレゼンスを維持しつづけているということだ。

そのLSが5代目へと完全刷新された。11年ぶりというフルモデルチェンジの背景には、次代に向けた大胆な革新への模索があった。

「自動車を取り巻く環境が著しく変わりつつある中、レクサスのフラッグシップとして何が必要かをゼロから考察しました。そこにはマスタードライバーである豊田(章男)の意向も関係しています。

時程ありきの中途半端なモデルチェンジならやらないほうがいい。初代を超える衝撃をもった妥協なきものを——と、我々に檄を飛ばしつづけました。強烈なプレッシャーでしたが、その言葉のおかげでこちらも開き直って、古い殻を破りにいけたのも事実です」

新型LSの開発を指揮した旭利夫チーフエンジニアは、自らがLSへの憧れをもってトヨタに入社したという。そして3代目以降はLSの開発にも関与している。つまり、歴代の美点を知り尽くしている人だ。そんな旭氏に託されたLSの完全刷新においては、ラグジュアリーの価値軸が「モノを持つ歓び」から、それを通しての「経験」へとシフトしていること、そしてモノに宿るストーリー性を重視することに留意したという。

ダイナミックかつ繊細。唯一無二の独創的デザイン

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その意向を象徴するのはやはりエクステリアデザインだろう。前型よりひときわ低く構えたその伸びやかなプロポーションは、車体寸法を一本化したこと以上に、まったく新しいプラットフォーム「GA−L」の採用が大きく作用している。先にデビューしたスポーツクーペのLCと基本設計を共有することで、このプロポーションが物語る低重心化に加えて、理想的なサスペンション構成による運動性能の向上が果たされた。このダイナミックな意匠はそれを素直に表現したものだ。

一方で、ドアの開閉リーチがコンパクトに収まる6ライト形状の採用や、ドアを開けた時に瞬時に車高を上げて足腰の負担を和らげる乗降モードをエアサスに設けるなど、LSにとって重要な後席の居住性や乗降性には最大限の配慮がなされている。

レクサスが今、車づくりにおいて唯一無二の自分らしさを強く意識していることは、内装のデザインからも伝わってくるだろう。マテリアルやフィニッシュはライバルを凌駕するクオリティのみならず、和の繊細な感性がその端々に反映されている。たとえばアートウッドの化粧パネルや切子細工を再現した硝子のオーナメント、一枚布を職人の手で折り重ね、立体的な表情としたハンドプリーツのドアトリムなど、職人の手が尽くされたそれらのアイテムは、日本の出自を印象づけながらLSをモダンに彩るものだ。

ドライバーが体感するLSとの阿吽の呼吸

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運動性能を際立つものとしたFスポーツや、ラグジュアリーサルーンとしての贅を極めたエグゼクティブなど、5つのグレードで構成されるLSには、LCにも採用されたV型6気筒3.5Lマルチステージハイブリッド、そして新開発となるV型6気筒3.5L直噴ツインターボと、ふたつのエンジンバリエーションがある。後者は従来のV型8気筒4.6Lの後継にあたるものだが、高速燃焼技術および高効率ターボチャージャーにより、それを上回るパワーとトルク、そして世界最高クラスの環境性能を実現している。ちなみにグレード、エンジンを問わず全モデルで駆動方式はFRか4WDかを選択可能だ。

「LSを知るお客さまに最も違いを感じていただきたいのは走りです。車がひと回り小さくなったような感覚で意のままにコントロールすることが出来る。これは、ディーラーでのご試乗で十分に感じていただけると思います」

いや、車を動かさずともシートに身を任せるだけでこの感覚は体得できると思う。骨格そのものが変わったことによって視界がより開け、視覚情報の多さから操るものが身軽に感じられる。新しいLSにはそんな好循環が見てとれる。

そして走り出してみれば、劇的な変貌を遂げていることが伝わってくるはずだ。

タウンスピードでの軽快な印象はそのままに、高速道路やワインディングロードでは加速時のレスポンスのよさ、減速時の姿勢の安定感、操舵に対する応答のズレのなさやロール量の少なさなどを実感することが出来るだろう。思い通りに車をコントロールできるということは、助手席や後席の乗員に余計な負荷をかけず、優しい挙動を引き出しやすいということを意味する。

実際、新しいLSの後席に座ってみると、発進や停止、右左折といった基本的な走行状態でも、体を揺すられることが少なくなっていることに気づく。スポーツセダンと称しても大袈裟ではないキビキビしたハンドリングや高速域の安定性といった運動性能が著しく向上している。相反する要素の両立はレクサスの車づくりにおける哲学のひとつだが、LSではその哲学を“走り”で体感できるはずだ。

LSオーナーこそ実感する“走り”の進化

エモーショナルな走りを世界最高水準の支援技術で

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“走り”にまつわる緊張や不安は、世界最高水準に達した高度運転支援技術の数々が軽減してくれる。たとえば対車両だけでなく歩行者までをカバーし、従来のブレーキ制御に操舵制御を新たに加え、衝突回避支援を行う進化したプリクラッシュセーフティシステムや、ドライバーの無操作状態などの異常を検知し、周囲にホーンやハザードランプで報知しながら緩減速〜停止までを行うドライバー異常時停車支援システムなど、その機能は他に類のないものとなっている。

また、車線内保持及び車線変更を熟練ドライバーのようにアシストするレーントレーシング&レーンチェンジアシストは、長距離移動での疲労を最小限に留めてくれる。これら作動状況は大型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)に表示され、ドライバー視線の仕様になっている。

「新型LSはオンタイムのフォーマル性という従来の期待値を維持しながら、スポーティネスとそれを表現したデザインによって、お客さまのオフタイムもカジュアルにサポートする最適な車として開発できたと思っています。これまでのLSのお客さまにはもちろん、他モデルにお乗りのお客さまにも是非ご試乗いただきたいですね」

誰もが認める日本最高峰のラグジュアリーサルーン。その個性を走りで際立てることを決断した旭チーフエンジニアの言葉の端々には、全力を出し切った挑戦者のような明るさが窺える。新しい時代の新しい価値を提供する新型LSに課せられたその任を、日本の、そして世界のカスタマーはどう評価するだろう。それは僕にとっても楽しみなところだ。

わたなべ としふみ◎1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。

moment 2018年 3/4月号より